じぇねらるズ・ホーム

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うごメモジェネレイションズ 過去編「全て輪となり道へと進む・・・」

一人の少年がいた。

名前は「皇太郎(おうたろう)」。由緒正しき輪道家の15代目としてその世界に生を受ける。

 

彼の生まれた輪道家は代々続く武術道場で幼い頃から武術の鍛錬を行なっていた。父と母に深い愛情を込めて育てられ、周りの人々からも期待され、信頼され彼は真っ直ぐな性格に育った。

彼には他の者にはない不思議な力が備わっていた。自分の想像したものや、記憶を紙切れとして、実体化できる力である。紙切れには記憶の内容が文字や絵で記されている。そしてその記憶の書かれた紙を別の個体に変化させるという力を持っていた。刀、鉄砲などの武器から、おわんや橋などの日用品まで、彼は記憶の力で自由に作れた。しかしながら、その形は数時間しか持たず、ずっと形を保つことができず時間が切れるとただの紙切れに戻ってしまう。

皇太郎がまだ6歳の頃にその力は発現し12歳の頃にはその力を使いこなし自由にどんな物でも作り出せるようになっていた。その力を使い村を荒らす悪党や、山に住み着く魔物などを蹴散らし、いつしか彼は英雄と讃えられるようになった・・・

 

 

がしかし、彼が16歳の頃。父が長年患った心臓の病気で亡くなる。皇太郎はこの日が来ることは覚悟していた。彼はじっと皆に囲まれているもう動かない父の顔を見ていた。

父の葬式が終わった後、皇太郎は母に突然自分の身に付いてくるように言われ、言われるがまま付いて行く。向かった先は道場の裏にある祠。そこは幼い頃から父に近づいてはいけないと言われていた場所である。祠の戸を開けると、長い通路が広がっていた。母と共に、奥まで進むとそこには壁一面に硬貨が飾られていた。

向日葵、馬車馬、炎、歯車、鋼、迅雷、騎兵、大蛇、猫、兎・・・

 

様々な模様が硬貨が描かれていた。そしてずっと黙っていた母が口を開く。

 

「ここにあるものは『ウゴメダル』。我らが輪道家が守っている『禁断の力』が込められた硬貨です。これは身に付けることでメダルの持つ『魂の力』を一時的に借りることができるのです。かつて我々の先祖はウゴメダルを奪い合う王たちの長き戦いに終止符を打ち、この世界にある全てのウゴメダルを手に入れ、誰の手にも渡らぬようここに保管しました。そして・・・」

 

そういいながら母は奥にある大きな金の飾り台の上のメダルを手に取り、皇太郎に手渡す。

 

「・・・母上、これは?」

「これはグリフォンメダル。鳥獣の王の力を司った輪道家最強のウゴメダル。永遠に力を生み続ける能力を持ち、初代輪道家はこのメダルの力を持って争いを止めました。

皇太郎、これからあなたはここのメダルとこの場所を守らなければなりません。我ら一族はずっとこの力が外界に渡らぬよう守って来ました。

お父様もそのまたお父様も。

あなたにここの全てを託します。私にできることはここにあるメダルの力の情報をあなたに伝えることだけですが・・・」

皇太郎は動揺を隠せなかった。自分の家が何十、何百年もの長い間ここを守り、秘密にしていて、そしてその仕事をずっとやっていた父からその仕事を託されたことに。

しかし彼は嫌だとは言わなかった。両親のことはずっと信頼していて、この仕事から逃げることは一族を裏切ることと同じだと考えたからだ。

彼はそういった覚悟の下、代々続いてきた「仕事」を引き継いだ。

 

それからの皇太郎の毎日は忙しくなった。道場の師範をしながら、ウゴメダルの鍛錬と管理を毎日続けた。母は我が子に輪道家のメダル全ての情報を伝え、彼を支えた。しかしながら、グリフォンメダルだけは決して使わせようとはしなかった。グリフォンは輪道家を、世界を守った象徴であると同時に、自然の力に逆らった永遠を作る存在だからだと母は皇太郎に語った。

 

それから5年の月日が流れる。皇太郎はすっかり道場主としての威厳もつき、弟子は100人を超えるほどの大師匠となった。

父が死んでから5年、皇太郎はずっとあの場所とメダルを守っていたが世の中は平和で、ただ平穏な時間だけが過ぎ去っていた。

 

しかし、彼はこの時知る由もなかった。刻一刻と終わりの始まりが近づいているのを・・・

 

5月31日

その日道場は休みで、皇太郎は村外れの野原で一人空を眺めていた。青い空には雲一つなく、快晴そのものだった。

その時彼はふとあることを思い出した。ずっと前、母にウゴメダルのルーツについて聞いた所、自分たちのいる次元とは別に幾つもの世界があり、そこからこの世界に持ち込まれたと話してくれた。ウゴメダルがどこの世界の誰が持ち込んだのか、誰が作ったのかということはさすがの母でも知らなかったが。

 

自分たちのいる世界以外にも別の世界がある。その話を聞いて、皇太郎はいつか別の世界を出て、別の世界を見てみたいと思った。自分の知らない人々や場所や物で溢れかえっているのだと。そう思いながら空を見ていると皇太郎はあるものを見つける。

 

青い空に黒い雲のようなものがあった。よく見ると雲ではなくまるで割れた茶碗のヒビ割れのようだった。皇太郎が不審に思ったその瞬間、そのヒビは空一面に大きく広がって、空が割れてしまった。割れた所は真っ暗な空間が広がり、その割れ目に人や木が吸い込まれていく。

皇太郎は自分の目を疑った。空が割れてそこに何もかもが吸い込まれている。こんな天変地異が起きていることを。

 

「ハッ!まずい母上が!!」

 

皇太郎はすぐさま母のいる道場へと向かった。周りの人や木、ついには地面までもが割れ目に吸い込まれていく中、必死になって道場へと向かった。

道場につくと、すでに瓦は全て無くなって古くなっていた本堂の方は半壊していた。

「母上ーッ!母上ーーーッッ!!」

皇太郎は必死に母を呼んだ。

「皇太郎・・・ここです・・・」

「母上!」

母は武道場の柱に必死にしがみついていた。腕からは血が滴っていた。

「母上、ここはもうダメです。祠の中に逃げましょう!あそこならきっと・・・」

「いえ、皇太郎・・・もうどこへ逃げても助かりません。この世界はもう間もなく消滅します・・・」

母はそう言うと胸元から一枚のメダルを取り出す。

「これは・・・グリフォンメダル!?」

「これが・・・私の母親としてあなたにする最後の役目です。もうこの世界は滅びます・・・私には分かるのです・・・この世界の寿命が切れてしまったのが・・・きっと誰も助からないでしょう・・・でもあなただけは・・・私のたった一人の息子のあなただけは助かって欲しい・・・あなたは私の・・・世界の希望なのだから・・・」

そういった後母は皇太郎にグリフォンメダルを渡す。

 

「強くなりなさい皇太郎・・・全ての世界の民を繋げ、進むべき道へ導くのです・・・『全て輪となり道へと進む』・・・

輪の中心は・・・あなたです・・・」

 

 

その直後、道場ごと皇太郎達は割れ目へと吸い込まれていく。母は皇太郎の元から引き離され、割れ目の中に消えていってしまう。

「嫌だッそんなッ・・・母上ーーーーーッッ!!!

 

その時、皇太郎の背中に道場の折れた材木が突き刺さり、胸元を貫通する。

「ガッ・・・!?」

 

彼の意識は遠のいていく。彼は必死に手を割れ目の方に伸ばすが、その手の先にはもう愛しい母はいない・・・

 

 

「嫌だ・・・こんなこと・・・私は・・・はっ・・・母上・・・・・・」

 

そして彼の体は生きることをやめ、その亡骸は母の吸い込まれた割れ目に吸い込まれていった。

 

5月31日 輪道 皇太郎 死亡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼は死ななかった。世界が死ぬことを許さなかったから、何より彼が生きることを望んだから死ななかった。

死と絶望の淵から再び立ち上がり。戦うことを決意した。

全てを繋ぎ大きな輪とし、その輪で次の道を進むために・・・

 

うごメモジェネレイションズ 過去編「全て輪となり道へと進む」